会社で農地を買うー企業の農業参入についてー
- Sachiko Fukushima
- 2024年6月19日
- 読了時間: 6分
企業でも一定の条件を満たせば農地を購入できるようになりました。会社として法人が農業を行う形態としては、
本来個人事業だった農家さんが法人になる
既存の企業が新しく農業に進出する
農業を行うために新しい法人を設立する
などのパターンがあると思います。
今回は、法人(会社組織)でどうやって農地を買うか、ということについてお伝えします。

※参考記事
**目次**
法人として農業をするということ
先ほどお伝えしたように、会社組織として農業を行うパターンとしては
本来個人事業だった農家さんが法人になる
既存の企業が新しく農業に進出する
農業を行うために新しい法人を設立する
というようなパターンがあるかと思います。
中四国農政局さんが出している、中四国の組織形態別の農業参入企業数の内訳のグラフを見てみましょう。我が高知県は83法人となっっています。ダントツ株式会社での参入が多いですね。

ちなみに高知県では一般的な野菜の栽培が多いようですが、県によって果実栽培が多かったり、稲作だったりと、それぞれに特色があるようです。→※中四国農政局さんの企業の農業参入についてのページを参照にしてください
個人事業の農家から法人化して農業をしようとする動きが増えている原因としては、一定の利益を上げている農家さんの節税対策等からくる法人化から、採用や施設・栽培面積の拡大を加速させるため組織的運営を確立させるため、というようなパターンもありますが、一般企業の多角化や、農の分野に着目して…というような新規参入のパターンもあるようです。
今回は、新しく法人をつくって農業を行うための道筋についてお伝えます。

法人化のメリット・デメリット
法人化するメリットも当然ありますが、デメリットもあります。
良かれと思って法人にしたのに、「こんなはずじゃなかった…(´;ω;`)ウゥゥ」とならないように、事前にメリットデメリットを検証しておきましょう。
◆メリット
所得税の節税効果
家族への給与が経費にできる
社長や家族の退職金を会社の経費で用意ができる
自宅を事務所として使用した場合、家賃分が経費で計上できる
赤字が出たら翌年に繰り越しができる
社会保険に加入ができる(?デメリットにもなるかも)
採用の面で信用が得やすい
社会的な信用が得やすい
補助金や融資が受けやすくなる
後継者問題が解消しやすくなる
◆デメリット
設立に経費がかかる
運営していくにも経費がかかる
事務量が増える
社会保険に加入しなければならない
解散する時、費用や手間がかかる
一般的には上記のようなメリット・デメリットがあります。
ただ、単純に誰でも法人化したら上記のようなメリットにあやかれるわけではないので、まずは今の状況で本当に法人化して良いのかとか、事業計画や財務計画をどうするのか、ということをしっかりと考えてみましょう。

法人の種類
それでは農家が法人化する場合は、どんな法人の形態がいいんでしょうか?法人の種類を見てみましょう。特に、農地を所有できるようになる「農地所有適格法人」になることが出来る法人と、なることが出来ない法人があるので、どんな法人形態でやっていくかも大事な選択になります。
①株式会社
営利目的で事業を行う法人。出資者が出資額に応じた議決権を持つことができる(お金を出せば出すほど、会社内での権力が強くなる)。要件を満たせば農地を所有することができる「農地所有適格法人」になることができる。1名から設立可能。
②合同会社
営利目的で事業を行う法人。原則、出資者=業務の執行者となる。出資額のいかんに関わらず、一人一票の議決権を持つ。要件を満たせば農地を所有することができる「農地所有適格法人」になることができる。1名から設立可能。
③農事組合法人
農家さん達の共同利益の増進のための協同組合的な組織。株式会社のような営利目的の法人ではない。一人一票の議決権を持つ。機械などを共同利用するために設立した法人だと、「農地所有適格法人」にはなれない。農民3名から設立可能。→※農林水産省さんの農事組合法人設立参考資料
④NPO法人
非営利目的で事業を行う法人。どんどん拡大して儲ける農業がしたい!という人が選ぶ形態ではないでしょう。一人一票の議決権を持ち、10名から設立可能。社会的事業、公益的な事業を複数の仲間とわいわい運営していくイメージ。「農地所有適格法人」にはなれない。
⑤社団法人
こちらも非営利目的で事業を行う法人。一人一票の議決権を持ち、2名から設立可能です。営利目的ではなく、社会的事業や公益的な事業という観点から農業参入して事業をしたいけど、あまり仲間が多すぎるのはちょっと…意思決定は少人数でしたい、という方向け。「農地所有適格法人」にはなれない。

会社で農地を買う(所有する)ことができる法人の形態
上の法人の種類を見てみると、農地を所有できる法人とできない法人があることがわかりますね。
会社、法人が農地を買う、会社、法人で農地を所有するということは、どんな意味があるんでしょうか?
法人で農業をしていくならば、法人として継続して事業を続けていかなければなりません。野菜や果樹などの栽培においては、その栽培をする土地が必要になります。その土地の所有権がないと、使用のためのコントロールが完全ではないことになります。
例えば、使っている農地が社長の所有になっているとしましょう。その社長が亡くなり、もし身内ではない第三者が会社を承継した場合はどうでしょうか?前の社長の相続人が、「もうあなたの会社には農地は貸さない」と言ったら、その会社の事業運営はどうなりますか?
継続して事業を行っていくなら、会社で農地を買う、所有する、ということはとても重要な意味を持つことになります。
農地を買うことが出来る法人とは、どんな法人なのでしょうか?本来法人は農地を買って、農地として所有するということはできませんが、一定の要件を満たした株式会社、持分会社(合同会社など)、農事組合法人の一部、は農地を買って所有できるようになります。そのような法人を農地所有適格法人と言います。
※農地所有適格法人については別記事で詳細をお伝えします
単に会社組織で農業ができればいいではなく、農地の所有も見据えた会社をこれから設立しようとするならば、どのような形態の法人にすれば農地を所有できるようになるのかをしっかり確認しておきましょう!
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